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「少女・ネム」 (エンターブレイン)
どこから話せばいいのか。
長い年月を経てこの作品に辿り着いたけど、特筆すべきことのないただの名作だった。
面白いとは感じなかったけど、心の奥底から湧き上がるように感動した。
うちの実家はなぜか週刊ジャンプが年に1冊くらいあって、月刊のジャンプとマガジンは毎月購入されていて、あとはビッグコミックオリジナルがそこそこ、という文化の偏った家。そんな家で、多いのか少ないのか、フレッシュジャンプは年に2冊くらいはあった。年4冊のうちの2冊なので、それは多いのか少ないのか・・・。
基本的に新人作家の読みきりが掲載されていて、その読みきりメインというのがありがたかった。だって普通の週刊誌や月刊誌だと、年に数冊くらいでは結局話の内容がわからないから。オチや解決編が気になったまま過ごすことになってしまうから。まあ、それにもそのうち慣れたんだけど。しかし余談だけど、明らかに最近のジャンプって昔に比べて次週が気になる作品が激減してるよね。長期連載が多すぎて、1週読んだくらいじゃ何にもわからないので気にしようがない。
その話はおいといて、今回は木崎ひろすけという漫画家の話。私はこの作家のことを、ずっと前から知っていたけど、ほとんど何も知らなかった。出会いは、前述のフレッシュジャンプ。そこに載っていた、1作の短編。多分16ページくらいだったんじゃないかな。後で調べてわかったそのタイトルは、「双頭の蛇」。正直、他にも何作かあるうちのひとつではあるけど、とても印象に残る短編だった。全編にわたりセンスが良くて、キャラクターが魅力的で、オチも気が利いてる。何度も読み返して、ああ、これで、ああ、そうだこうなるんだー・・・って確認して毎回同じ読後感を得られた。
当時多分自分は小学生だったんだけど、今になって思い返してみて、その短編はとても絵が上手かった。鳥山明の「上手さ」だけを抽出してもっとクリアーに研ぎ澄ませたような絵。最近ふと思い出して気になって、辿り着いた質問スレでその絵柄を説明するときに、「アニメっぽいんだけどセンスが良くて素朴で、鳥山明と宮崎駿の間くらい」と表現したら、何と、見つけてくれた人がいた。それが、木崎ひろすけ。どうやら私が読んだ短編は別名義だったようだけど。
ペンネームを知って検索をかけて、アマゾンでも検索して、手に入れられるのはどうやら現在では3作だけで、まず1冊、「A・LI・CE」を中古で取り寄せた。その時も、絵はとてつもなく上手かったけど、面白いとは思わなかった。でも、何となく気になる。かつ、満足できない。そこで、また1冊、「グラウンド・ゼロ」をこれもまた中古で取り寄せた。完全に未完のその作品は、やはり面白いとは思わなかったけど、なんだか気になる。満たされない。そこで更に最後の1冊、「少女・ネム」。
この最後の1冊は、アマゾンの商品説明を見たところ「漫画家哲学モノ」らしくて、しかも世間での評価が高いらしくて、なんだかなあと思ってた。そういうの苦手。漫画にしか通用しない哲学を漫画で語るなんて、手前味噌で概ね嫌い。だから順番が最後になったというのもある。
が、読んでみて、驚くほど素直に感動した。まず、ただの漫画家哲学モノではない。漫画家はかくあるべき、漫画とはこうして描くもの、なんて自分本位に語ったりしない。ただの一人の少女の物語だった。その少女の感性の豊かさが、台詞のごくごく少ない画面からあふれるほどに伝わってきて、感動させられた。たまたま彼女にとってそれが漫画だっただけなんだ。そして漫画にまつわるからこそ、これだけキラキラさせることができたんだ。そしてそのキラキラは、きっと作者が持っているそれそのものなんだ。と、そこまで自然に理解できた。そして、こんな天才みたいな作家さんが若くして亡くなってしまって新たな作品どころかこの3篇以外の過去作品も今では読むことができないということが、残念でならないと思った。
なんだか、そういう作家さんなんです。木崎ひろすけ。アマゾンのレビューでも褒めちぎられていますが、実際読んでみたら本当にそういう人。そういう作品。
しかし「鳥山明と宮崎駿の間くらいの絵」なんて説明でよくわかってくれたもんだ。あのスレの人たちすごい。
あとこれは別の話だけど、他にもフレッシュジャンプで読んで気になったままの短編はいくつかあって、もうひとつスレで質問してみたらこちらもタイトルだけで返事をもらえて、しかし検索しても何も引っかからないので確かめる術がない。でも、「アルマジロ飼育員が主人公の漫画」なんて普通考えて2つとないよな。
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