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今更すぎますが、
「医龍」 (乃木坂太郎/小学館)
を読みました。
面白かった! 非常に面白かった。
医療ドラマとしてだの職業漫画としてだの、そんな観点からはわたしが語るまでもなく既に多くの人がご存知のとおりに面白い。そう、間違いなく面白い。
で、わたしが今更あえてこの作品について語りたいのは、
その、ハッタリの素晴らしさについて!!!
ハッタリ! そうだ、何か足りないと思ったら、最近の漫画には、これが足りなかったのだ。と、思ったね! わたしは!!
ハッタリ。つまり、人の気を引くための派手な言動や展開。最近の漫画には、そういう強さが足りなかったとは思いませんか皆さん。特に少年漫画。面白い・・・といえば面白いんだけど、どこか熱くなりきれない。燃えられない。
漫画を読んで、燃えたいんだ!!!
そのためにはハッタリなのですよ。
無茶な展開を見せられて、
(「MMR」より)
って、言いたいんだよおおおおお!
「えっ!?」じゃなく、「は?」なんかじゃ絶対なく、
「何だって―――――!!」
って、度肝を抜かれたいんだ!!
そして来週どうなるんだと毎号毎号気になって眠れないくらいになりたい。次の発売日が待ち遠しくて仕方ないくらいのハッタリの効いた引きで「以下次号!!」って繋いでほしい!!
漫画って、昔はもっと無茶なもんじゃなかったか? 頭で理解するんじゃなく、心で圧倒されるものじゃなかったか?
そうだ、だからつい「地上最強の男・竜」とか 「幕末攘夷伝」とか見ると興奮しちゃうんだ。最近の少年漫画で見かけないから。久々に燃えさせてくれるから。
で、どうやら最近ではハッタリは、青年漫画にあるらしい。そうだ、最近わたしがスペリオールをつい買ってしまうのも、間違いなくそれだ。「医龍」もだし、「スプライト」も「ジキルとハイド」も「ラーメン発見伝」も、ガッツリ引きを作って続くにされるから、気になって仕方がないんだ!! 医龍なんか、読み始めたら一気だったもんね。途中で止められなかったもんね。
ジョージの作品も、全てかなりのハッタリだ。「銭ゲバ」も「アシュラ」も、展開すべてがハッタリと言って過言ではない。毎回毎回度肝を抜かれる展開だ。それに引きつけられるんだ。平田弘史もそうだ。最近わたしが大好きな漫画はみんなそうだ。
「北斗の拳」だって、「三国志」だって、魅力はそれじゃないのか? いつの時代も男子たちの心を惹きつけてやまないのは、そういう常識をブチ破った言動や強さじゃないのか!? 「キャプテン翼」だってそうだろ。今でも語り草になってる漫画って、ハッタリが凄まじいんだよ!!
大げさな台詞回しもわざとらしいアクションも、是非、引きを作るために使っていただきたい。最近の少年漫画は、明らかにそこが物足りん。カッコいいシーンは、ただキャラクターをカッコいいと思わせるためだけのものじゃないと思うんです・・・。キャラクター至上主義にはいい加減飽き飽きなんです・・・。
思えば、わたしたちはハッタリ世代だったのかもしれない。いや、「最後の」とつけるべきなのか・・・。ハッタリは、昔の漫画には当たり前のものだったもんね。スポーツ漫画にリアリティなんて必要なかった。いいんだ、心が燃えればそれで!!
ハッタリは宗教だと思う。釈迦の背に後光が差すように、モーセが海を割って見せたように、キリストが復活を果たしたように。人は圧倒的な何かに平伏し、妄信したいのだ。その敗北は快感であり幸福だ。その心こそが信仰だ。
かつての漫画のハッタリは、間違いなくそれくらいの影響力があった。子供たちにとって。
例えば
「キン肉マン」 (ゆでたまご/集英社)。
当時の子供たちは、あの漫画のハッタリを妄信した。その信仰心が、動くはずのないネコジャラシを動かしたのだ!!
おそらく、わたしたち世代の男子たちは、かつてその手で奇跡を起こしたはずだ。常識だよね!! そう、
ねこじゃらしは強く握れば握るほど手の中から抜け出ていく!!
ラーメンマンがその方法で敵の技を解いた。子供たちはラーメンマンを信じたよ、あの時。疑いもしなかったよ。信じたかったんだよ。疑うなんてありえなかったんだよ。でもね、本当は
ネコジャラシは握ったところで微塵も動きません。
でも、動いたの!! みんなの手から、ネコジャラシは抜け出たの!!
だって、
みんなが信じて抜け出るように工夫して握ったからね!!
わたしも握ったよ。小指で押すようにちょっと指でウェーブ作るみたいに握ると、何とか上から出てくるんだよ。みんな、「おお~~~っ、出るう~~~!!」って、自分でわざとやってるくせにビックリしてたよ。あれね、ほんと宗教。信じる力。
人は、信じたいものを信じるんです。いくら理に適っていようと真実だろうと、信じたくないものは信じないんです。
そう、人は、心の底ではハッタリを信じたい!! 圧倒的なものに騙されたい!! 漫画でくらい、無茶をやっていいじゃない!! 夢を見せてくれたっていいじゃない! 圧倒される快感がほしいじゃない!!
キン肉マンがブラックホールに吸い込まれて、「ええええええどうなるの―――っ!!!」って、来週が待ち遠しくて仕方なくなりたいじゃない。そんでホワイトホールなんてもんから帰ってきて、ああ良かった!って、何の理屈もなく安心したいじゃない。
ブラックホールに吸い込まれたら瞬間に粉々で帰ってこれるわけないだとか、そんな当たり前の話はしてくれなくて結構!! 吸い込まれても出口を探していられるキン肉マンに望みを繋がれたもの。入り口がブラックだからってだけでホワイトなら出口みたいな安直すぎる子供騙しを、平気でやってのけてほしいよ!! わたしたちが信じたいのはそんな無茶なハッタリなの!! 今の子供たちはそんなのがないなんて、味気なさすぎるよ!!
わたしはサンタクロースをただのお話としてしか教えられなかった(だからいないと最初から分かってた)子供ですが、それでもいろんな漫画に夢を見ることができた。それは非常に幸福だった。
勿論バカバカしい絵空事だっていつかは気づくんだけど、だからこそ、子供のときくらいそんな夢を見てもいいと思う。そんな経験に、精神は養われていくのだと思う。
しかし、わたしたち最後のハッタリ世代のせいで、漫画からハッタリが消えたような気がしなくもない・・・。中2くらいになるとね・・・バカなものは否定したくなるんだよね・・・。特に自分が妄信してた過去を消したくて仕方なくてね・・・。
ああ、わたしたちは愚かであった。ハッタリ、カムバックプリーズ!!
一応最後に断っておくけど、医龍はハッタリだけの話じゃありません。地に足の着いた医療ドラマです。ただ、見せ方がハッタリエンターテイメントなだけで。
わたしの中では、ハッタリの進化形として捉えられてるけども。ハッタリプラス理屈。みたいな。頭でも心でも理解させるハイブリッド型。
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