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不埒

まっすぐ立ってフラフラ歩きたい

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ヤンキー・ロマンチカ


「てんねん」 (吉田聡/小学館)

ヤンキーはロマンチストだ。少なくとも昔ながらのヤンキーは。愛に飢えているくせに強がって背を向ける。そうしていっそう愛への執着を強くする。しかしそれでも意地を張って、いまさら素直に手を伸ばしたりなんかできない。そんな古き良きヤンキーたち。
の、話なのだが、そうでもない。そんなヤンキーたちはたくさん出てくるが、主人公はそうではない。てんねんこと御光鯛二(20)。その若さで大阪で知らぬものはない大悪党。しかし親代わりの空然和尚の死を節目に、「ちゃーんと」しようと仏門に下った修行僧だ。子供の頃より人に見えないもの――即ち幽霊が見えてしまう鯛二は、その物言わぬ使者たちから解放されるために「ちゃーんと」することを決める。そんな彼の前に次々現れる悩み多き人々を救う話。

しかし救うといっても、ただただ許し受け入れるのではない。彼らの本当に必要とするもの、心に巣食う諸悪の根源、それらに現実的に決着をつけさせるのだ。 本当は誰だってわかっている。本当に大切なもの、大事にしなくてはいけないもの、迷っても手を出してはいけないもの。そして、どうしようもないときにこそ どうすべきかということも。
そうやっててんねんに救われるのが、主に愛に飢えたヤンキーたちだ。奴らは図体はでかく力は強く、そのせいでまっとうな 道からはみ出してしまう。そこは自分の力だけがすべて、そうでなければ金しか解決の道具はない弱肉強食の世界。そんなフィジカルだけがものをいう世界で生きてきて、大事 なものに触れる作法を知らないのだ。愛という壊れやすくささやかな幸せを、誰よりも渇望しているのに、ガラス越しにしか見ることのできない奴ら。手に入ら ないんだと拗ねて暴れて、また遠ざかる。そんなことばかり繰り返す彼らを救うのがてんねんだ。
欲しいのならば、カッコつけてても仕方ない。大事なものは大事だと認めて、手を伸ばすしかないの だ。その第一歩から、優しく導き背中を押し、時には痺れを切らして蹴りを入れ、とにかくそれへ向かわせる。向き合わせる。そうしたら次に、目の前のガラス は壊していいんだと教えてやる。それは割っても誰も傷つかない、お前の心の中だけにあるガラスなんだと。思い切りぶち破れ。だが、力ずくはそこで終わり だ。お前も知っているとおり、大事な「それ」は、極めて壊れやすい代物だ。かよわくてささやかで暖かい「それ」を、そうっと壊さないように、細心の注意を払って触れてやらないといけないんだぞと。そして幸運にも手に入れることができたなら、一生大事にしろ。決して手放すな。命をかけてでも守ってやれ。お前の両手両足は、これからはそのためだけに使うんだと。

ヤンキーは顔にも図体にも似合わずロマンチストであること。いつだって愛に飢えていること。酒井法子とか好きだったり。
そういうのを、バカバカしい甘ちゃんめとと若干引いて見つつも、厳しく応援してやるそういう作品です。
何年もヤンキー漫画描いてきてる作家さんとしてさすがだなあと思いました。
あと・・・・・・あの・・・ジョセフと金田と矢吹ジョーが好きな人間が、好きにならないわけないんだよな・・・。御光鯛二という主人公を。こういう好みがきっと私は古いんだろうと思います。確かに最近そういうのないもん。

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