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ある女性の話。
何だか凄いなと、正直その気持ちは想像もできないなと、そう思ったので、この機会に書いておく。
その人は90歳を迎えた今、ご主人と長男が首を吊った家で、一人で暮らしています。それってどんな気持ちなんだろう? 普通に考えれば自殺してもおかしくないような状況じゃないんだろうか?
しかし端から見る限り、そうショックを受けてるようでもないというか、勿論二人の死からは10年単位で時間が経っているので、さすがに引きずってはいないと言われればそうかもしれないけど、でも、何というか、実際見たことのない人にわかるように説明するのは難しいのですが、本当に、特に何もなかったかのように平気そうなんです。それでも強く生きていこうだとかあえて心に決めた様子も全くなく、本当に普通にずっと同じようにエネルギーを溢れんばかりに満たして生きていらっしゃる。
何でそんなことができるの? いや、批判でなく。純粋に疑問。ある意味尊敬。というよりは、圧倒される。
わたしがその人と関わったのは合計15年ほどしかなくて、知っている限り、その人の一番古いその人らしいエピソードは、結婚におけるそれです。最初の。勿論聞いた話ですが。
その人は4人だか6人だかの兄妹の末っ子で、戦時中、都会に奉公(出稼ぎ?)に出ていたらしいのですが、兄が戦死し、姉たちはみんな既によそに嫁いだ後だったので、自分が家を継ぐことになったそうです。その為に、早速お見合いをして入り婿をもらったと。そして、1週間で離婚したと。あえて追い出したとは書かないけど、追い出したんじゃないかなあ。そうでないにしても、戦後間もなく、1週間で離婚するって、結構エキセントリックでスキャンダラスじゃないのかな? 相手の方の人となりはわたしは全く知らないんですけども。実際、問題あった人なのかもしれないけど。
でも田舎のことなので、そう遠くから来た人じゃないと思うんですよ。せいぜい同じ町内くらいの。それをさっさと離婚して出て行ってもらって、後々の関係とか、周りの噂とか、全く気にならなかったんだろうか。何なんでしょうね、その強さは。
そして、やはり家を継がなくてはならないので、すぐに2人目のお婿さんを迎えます。これも聞いた話ですけど。その方との間には1女の下に3男をもうけ、今度こそ人並みに結婚生活が続いたそうです。
しかし、ある事情により(って、事情だけで行動に移せるものでもないだろうけど)、結婚生活30数年で、ご主人は自殺。そこまでにも、長男の嫁が出て行ったり続いて長男も出ていったり等、色々あったらしいのですが、詳しくはわからないので、略。
ご主人の死後、これもいくつかの事情があって、帰ってきた三男夫婦と同居。
そして簡単には説明できない複雑な家庭(一族?)の問題があって、それと関係があるのかないのか、長男がある日、留守宅に立ち寄り、自殺。遺書もなく、理由は不明。第一発見者は、自殺者の母。つまり、この話の主人公の女性です。
ご主人が首を吊ったその同じ場所で、今度は息子が首を吊っているのを発見するって、どういう気持ちなんでしょうね? 全く想像できない。
しかもその葬儀の翌日には、普通なんですね。その女性は。ややいつもの喋りっぱなしの状態と比べると、確かに口数はいくらか少なかったように思いますが。でも、大体普通というか、葬儀後のご近所への対応で嫁に小言を言えるくらいには元気でした。
更にその後も色々あって、三男夫婦の3人の娘のうち、長女は普通に進学で家を出たものの、次女が家出(その後10年以上その家には帰らなかった)。その数ヵ月後、三男嫁とその三女が家を出て別居。三男もその後を追うように家を出、その女性は1人になります。そこから、10数年間、彼女は1人で暮らします。ご主人と長男が首を吊った家で。たまに長女は帰ってきていたようですが。
そして去年、三男が病没。いろいろな事情のせいもあって、その女性は葬儀への参列もなし。しかし結局、納骨はその女性の守る先祖代々の墓へとなりました。
でも、やっぱり普通なんですよね。どう見ても普通。普通にずっとうるさい。ずっと喋ってる。わかりますけど。普段1人だから誰かが来てくれたら嬉しくて饒舌になるのは。
でも、息子が(また)死んだというのに、どうしてこの人はこんなに普通でいられるのだろうか? 仏壇に飾られた遺影を見て、「ええ写真じゃわ~。生きてるときはずっと怒ってたのに今はずっと笑とってくれるからうれしいてうれしいて」なんて言えるんだろうか?
その、蔓延る蔦のような生命力は何なんだろう?
ほぼ完全に他人事となった今では、ただただ圧倒されるのです。
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